-
千利休も参禅 茶の湯ゆかりの禅寺
-
- 臨済宗大徳寺派大本山の大徳寺は鎌倉時代末期、大燈国師(宗峰妙超)が京都・紫野に「大徳庵」という小さな庵を結んだことに始まります。嘉暦元(1326)年に法堂が完成、以来「龍寳山大徳寺」として約700年にわたって修行僧が集い、禅の法統を受け継いできました。応仁の乱後、復興に力を尽くした一休宗純和尚、江戸時代には沢庵宗彭和尚らが住職を務め、現在も山内には20を超える塔頭があります。
茶の湯文化との縁も深く刻まれてきました。「茶禅一味」ということばがあります。茶の湯と禅は違うように見えても、求める境地は同じである、という意。「侘び茶」を大成させた千利休をはじめ、多くの茶人がその境地を求めて参禅しました。
こうしたことから、建造物や庭園、障壁画、茶道具、中国伝来の書画など、多くの文化財も守り伝えています。 -
畳床に「寛永十三年」の墨書 最古の証し
-
- (「寛永十三年 結夏日」の墨書が確認された畳=赤外線カメラで撮影、京都府文化財保護課提供)
- 文化財建造物の保存修理事業として、2020年から国宝の方丈などの部分解体修復が進められています。その過程で2021年末までに、方丈内に敷き詰められていた114枚の畳がすべて取り外されました。このうち4枚の畳の裏に、江戸時代初期の「寛永十三年 結夏日」の墨書がありました。「結夏日」とは、夏の修行「夏安居」の始まる日。大徳寺では4月15日にあたります。つまり「1636年4月15日」となります。文化財担当者は「畳職人の間では、大徳寺の畳床は日本で一番古いと知られていたが、日にちまで確認できた」と言います。
-
- (墨書のあった畳の位置を記した方丈の平面図)
-
どんな人が歩いたのか…
-
- 大徳寺の方丈は8室からなる特異な形式で、もともと住職の修行生活の場でしたが、その後、朝廷の勅使や幕府の役人を迎えたり、法要などに用いられる空間となっていきました。現在の建物は、棟札から寛永12(1635)年に京都の豪商後藤益勝の寄進によって開山・大燈国師の300年遠忌に再建されたことが分かっています。年号が記された4枚以外にも、それぞれ畳を敷く場所などが墨書されていました。使われている材質も同年代のものと思われます。畳表はすり減ったり、傷みが生じれば替えられますが、土台となる畳床は、再建当時のまま使われ、長い大徳寺の歴史の半分以上にわたって、多くの人の足音を刻み込んでいるのかもしれません。
-
畳の良しあし決める「畳床」
-
-
- そもそも畳床とは、どういうものかご存じでしょうか。畳の芯の部分で、よく乾燥した稲わらを何層にも重ね、規定の厚みにまで圧縮して麻糸で締めつけます。現代では用途に応じて、木材チップを使った畳ボードや発泡樹脂系の素材、ポリスチレンフォームを重ねた新建材なども使われていますが、畳の良しあしを決める最も重要な部分です。
- 昔ながらの稲わらは、耐久性、調湿性、断熱性、保湿性に優れていますが、それでも経年変化や湿気によってかびが生じたり、腐ることもあります。歴史ある建造物の多くで、時代とともに畳が入れ替えられている中で、大徳寺方丈の畳床は、墨書によって400年近くもの間、使い続けられていたことが裏付けられました。このため、現状を生かして補修し、次代に受け継いでいくことになりました。
-
手作業で修復 技術者少なく
-
- (畳床上面の凹んだ箇所にわらを足し、下面まで廻し縫い付ける=山口県、荒川製畳所)
- 使い込まれてでこぼこしている部分に稲わらを足して、厚みを均一化する職人技が求められます。しかし明治以降、畳床をつくる技術も機械化が進み、こうした手作業で整える技術者はほとんどいません。唯一、山口県で手がける製畳所があり、現在、方丈の1室、書院の畳12枚を昔ながらの手作業で修復しています。
方丈全体を見れば、まだ10分の1程度の修復です。今後、全体の修復を終える予定の2026年度末までに、すべての畳を手業で修復していきたい。そうすることで昔ながらの製畳技術を守り伝えたいのです。
仏道修行をはじめ、茶道、華道、香道、書道、さまざまな武道…。およそ「道」とつく日本文化は、畳の上で培われてきました。多くの人が座した日本最古の畳床を修復することで、そうした日本文化そのものを見つめ直す機会にもしたいと願っています。 -
リスクとチャレンジ
- 工事完了は2026年度を予定しておりますが、新型コロナウィルス感染症をはじめ、社会状況・自然災害の影響によっては、やむを得ず修復工事の期間が延長される可能性がございます。また、各返礼品の提供時期も遅れる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
また、特別拝観等の実施にあたりましては、感染拡大防止に細心の注意を払います。お越しいただく皆様には、感染予防対策へのご理解とご協力をお願い申し上げます。 -
総長よりご挨拶
-
-
さいごに…
-
- 畳の修復費用全体では、数千万円規模になります。文化財修復の補助金があるとはいえ、到底すべてを賄えるものではありません。クラウドファンディングのご支援を修復費用の一部に充てるとともに、ご支援いただいた全ての皆さまのお名前を芳名録に記して方丈内陣に収め、ともにまた新たな文化、歴史を刻んでいきたいと思っております。
-
賛同人メッセージ
-
茶道表千家家元 千宗左
-
-
茶道裏千家家元 千宗室
-
-
茶道武者小路千家家元 千宗守
-
-
歌手 さだまさし
-